離婚を考えている方へ

はじめに

 夫婦生活を営む中で、あなたは離婚についてお考えになったことはあるでしょうか。「離婚」と一言で言っても、それに伴い解決しなければならない問題が、実は山ほどあるのです。
 では、具体的にどのような問題があるのでしょうか。離婚の手続きの概略とともにご説明いたします。

離婚手続

 離婚を実現させるための手続きには、以下の4つがあります。

1.協議離婚

 最もオーソドックスな手続きです。家庭裁判所が関与することなく、当事者同士の話し合いでの解決を目指します。
 メリットは、夫婦が納得さえすれば、どのような理由でも離婚が可能であることや、公序良俗に反しない限りどのような内容での合意もできることです。
 夫婦の感情的な対立が激しいときは、当事者同士の直接の話し合いが難しいことがあります。そのようなときは、弁護士を代理人にして話し合いをすることで協議がスムーズに進むことがあります。
 なお、離婚の協議がまとまった場合には、離婚届に夫婦が署名押印をして役所に提出すれば協議離婚が成立します。離婚に伴い、養育費や財産分与、慰謝料、子の面会交流などについても合意をした場合には、後の紛争予防の観点から、合意内容を、公正証書(法律の専門家である公証人が公証人法・民法などの法律に従って作成する公文書)や合意文書にしておくことをお勧めいたします。

2.調停離婚

 例えば、相手方が離婚を拒否したり、金銭的な問題で折り合いが付かないなどの理由で、前述した離婚協議が整わなかったときには、家庭裁判所に離婚調停を申し立てることになります。
 「離婚裁判」という言葉を聞いたことがあるかもしれません。しかし、我が国の法律では、いきなり離婚の裁判を起こすことはできません。当事者同士の話し合いでは解決が図れず、法的手続をとる場合には、まずは家庭裁判所に対し、離婚調停を申し立てなければならないのです(これを調停前置主義といいます。)。
 離婚調停には、当事者である夫婦の他に2名の調停委員が同席します。調停委員が双方の言い分を聞きながら間に入ることで、当事者同士では平行線となってしまった話し合いが前に進む可能性が出てきます。なお、夫婦は交互に調停室に入るため、調停成立時を除いて、調停の最中にお互いが顔を合わせることは原則としてありません。
 メリットは、上記協議離婚と同様、夫婦が納得さえすれば、どのような理由でも離婚が可能であることや、当事者双方の意見を取り入れた解決ができます。
 しかし、調停手続は、あくまで話し合いの延長線上なので、相手方が離婚を頑なに拒否している場合に、離婚を強制することはできません。

3.裁判離婚

 離婚調停でも話し合いがまとまらず、調停が不成立となった場合には、家庭裁判所に離婚裁判を提起するほかありません。なお、調停が不成立になったからといって、自動的に裁判手続に移行するものではなく、改めて裁判を提起する必要があります。
 裁判離婚の大きな特徴としては、裁判官が判決をもって離婚を言い渡しできる理由(離婚原因)が限定されているということです。協議離婚や調停離婚が、夫婦が納得さえすればどのような理由でも離婚が可能であるのと大きく異なる点です。
 具体的には、以下の理由に限定されます(民法770条1項1号ないし5号)

ア 不貞行為(民法770条1項1号)
 配偶者ある者が自由な意思に基づいて配偶者以外の者と性的関係を結ぶことをいいます。
イ 悪意の遺棄(同2号)
 正当な理由がないにもかかわらず、夫婦の同居・協力・扶助義務(民法752条)を果たさないことをいいます。
ウ 3年以上の生死不明(同3号)
 3年以上、生存も死亡も確認できない状態が現在でも継続していることをいいます。
エ 強度の精神病かつ回復の見込みなし(同4号)
 婚姻の本質である夫婦の同居・協力・扶助義務(民法752条)を十分に果たせない程度に精神障害があることをいいます。
オ その他婚姻を継続し難い重大な事由(同5号)  具体的にどのような事情がこれに該当するかは、裁判官の自由裁量によりますが、ドメスティックバイオレンス(DV)や虐待などが代表例として挙げられます。

 但し、裁判になったからといって、その終結方法が「判決」しかないかといえば、そうではありません。裁判の途中に、双方納得の上で「和解」という形で終結する場合も多々あります。
 和解にて裁判が終結する場合には、上記の離婚事由以外の理由でも離婚することも可能ですが、判決の場合には上記離婚事由の存在に加え、それによって婚姻関係が破綻していると判断される必要があるのです。
 裁判官から見て上記離婚事由が一つも見当たらず、相手方が頑なに離婚を拒んでいる場合には、離婚は難しいと言わざるを得ませんが、逆に、離婚原因が存在し、かつ婚姻関係が破綻していると裁判官が見た場合には、相手方が離婚を拒んでいる場合であっても離婚をすることができます。

離婚する前に解決しなければならない諸問題

1.婚姻費用の分担

 離婚の話し合いや手続を具体的に始める前から、すでに別居状態にあるケースが多いです。
 ですが、別居はしていても法律上はまだ夫婦のままですから、離婚が成立するまでの間は、相手方に婚姻費用、つまりは別居中の生活費を請求することができます。
 具体的な金額については、全国の家庭裁判所で採用されている婚姻費用算定表に基づいて計算されます。夫婦が双方納得の上であれば、この算定表によらないで、自由に金額を決めることもできます。
 なお、この婚姻費用には、生活費の他、子の養育費も全て含まれています。

2.子の親権・引き渡し・面会交流

 未成年の子どもがいる夫婦の場合には、離婚に際し、夫婦のいずれが子どもの親権者となるのかを決めなければなりません。
 親権の中身は、身上監護と財産管理とに分かれますが、法律上の夫婦である間は、これを夫婦共同で行使するのが原則です(民法818条1項、3項)。  親権が夫婦の共同に属していることは、例え別居中であっても変わりないのですが、離婚前において、相手方が子どもを連れて別居したような場合には、正式に離婚が成立するまでの暫定措置として、子どもの監護者(仮の監護者)を定めておく必要が生じる場合があります。
 さらに、あなたが仮の監護者となったのに、子どもが相手方の下にいる場合には、子の引渡請求をすることができます。  他方、仮の監護者ではない親、離婚後に親権者となることが予定されていない親は、子どもとの面会交流を請求でき、子の福祉の観点からその請求の可否が判断されることになります。

離婚手続中(又は離婚後)に解決しなければならない諸問題

1.財産分与

 婚姻後から夫婦関係が破綻するまでに、夫婦が協力して共同で築きあげてきた財産(夫婦共有財産)を分与することをいい、その分与の割合は50対50とされることが一般的です。
 そして、財産分与の算定にあたり、いつの時点を基準に計算するかが問題となりますが、この基準時は、一般的に、夫婦関係が破綻した時期となります。このため、基準時は別居開始時とされることが多いといえます。
 それでは、そもそもどのような財産が分与の対象たる共有財産となるのでしょうか。以下、共有財産と判断されうる代表的なものを個別に見ていきましょう。

 ア 預貯金
 夫名義、妻名義が対象となるのはもちろん、子ども名義であってもその出捐者が夫婦であった場合には、それも夫婦共有財産として計算されます。
 しかし、一方が経営する会社名義の預貯金などについては、あくまで法律的には別人格となりますので、原則として夫婦共有財産とはなりません。
 もっとも、会社の営業実態が夫個人の営業と同視できるような場合には、会社の財産も夫婦共有財産として算定されることがあります。

 イ 不動産
 基準時における時価をもって算定されますが、ローンなどの負債が残っている場合には、事案に応じ、金融機関などと調整する必要が生じてきます。原則として、借金などのマイナスの財産も共有財産として見られるからです。

 ウ 生命保険(解約返戻金)
 基準時において仮に解約した場合の解約返戻金額が、財産分与の対象となります(実際に解約まですることは要しません。)。
 上記預貯金と同様、解約返戻金が夫婦共有財産となるかは、被保険者の名義よりも、実際に保険料を負担した人が誰かによって判断されます。

 エ 退職金
 退職金は、賃金の後払い的な性格が強いことから、夫婦共有財産といえます。夫婦の協力があったからこそ、働くことができたという発想です。
 基準時において仮に退職した場合の退職金額が、その対象となることが多いです。

 オ 貴金属・株式・ゴルフ会員権・自動車
 基準時における時価をもって算定されます。但し、自動車は一般的に財産分与の対象となりますが、貴金属などはよっぽど高価なものでもないかぎり通常は財産分与の対象として算定しません。

 以上に対し、例えばご自身の親から相続した財産や、婚姻前からすでに所有していた財産などは、夫婦が協力して共同で築きあげてきた財産とはいえないため、原則として財産分与の対象にはなりません。財産分与の対象にはならないこのような財産を、特有財産といいます。

2.慰謝料

 離婚の場合の慰謝料には、①離婚原因となった個別的な有責行為から生じた精神的苦痛に対する慰謝料と、②離婚により配偶者としての地位を失ってしまったことに対する精神的苦痛に対する慰謝料、の2つを含みます。
 慰謝料が認められる場合の典型例としては、不貞行為・DVなどの暴力などが挙げられますが、具体的な金額は個々の事案に応じて判断されることとなります。
 ただ、裁判上、一般的には150ないし300万円程度に落ち着くことが多いように思われます。

3.親権・養育費・面会交流

 父母が離婚した場合には、親権はどちらか一方の単独親権となります。そのため、未成年の子どもを持つ夫婦は、離婚にあたって親権者をどちらか一方に定めなければなりません。
 当事者同士に争いがなければそれまでですが、双方が親権を主張した場合、親権者の決定には、夫婦間の事情のみならず、子の事情等あらゆる事情を考慮した上、子の福祉の観点からより相応しいほうが選択されることになります。
 考慮される具体的な事情としては、父母の監護能力、子どもの年齢や性別など実に多様な事情がありますが、乳幼児の子どもについては母親が親権者となることが多いようです。
 そして、養育費に関しては、これも当事者双方納得の上であればいくらでも構わないし、極端な話、0円でも構わないのですが、争いとなった場合には、上記婚姻費用分担で述べたのと同様に、全国の裁判所において採用されている養育費算定表に基づいて計算されます。
 また、親権者とならなかった親は、子どもとの面会交流を請求することができます。面会交流とは、親子として、子どもと直接面会したり、またはそれ以外の方法(手紙など)で交流することを指します。
 たとえ親権者となった父母が、心情的に子どもに会わせたくないと思っても、面会交流は子の福祉の観点からは望ましいものとして、特段の事情がない限り認められるのが一般です。

4.年金分割制度

 離婚時年金分割制度とは、おおまかに言うと「年金額を計算するための基礎になる保険料納付実績(共済年金では掛金払込記録)を分割する手続」です。最大で2分の1ずつでの分割請求が可能となります。
 例えば、将来夫が10万円の年金を受給する場合に、2分の1での分割請求をしておけば、妻も将来半額の5万円の年金を受給できるとよく誤解されるのですが、そうではありません。
 あくまで10万円を受給するために夫が納めていた保険料の2分の1を妻が納めていたことになるだけであり、実際の受給額は5万円よりも低くなる場合があります。
 上述した財産分与や慰謝料においては、一括又はこれに近い回数での分割で支払われることが多く、一生涯毎月固定額を支払うという形式はあまり現実的なものではありません。また、離婚時の年齢によっては新たに仕事を見つけることが難しいこともあり得ます。さらに、専業主婦の方には、就労した経験がない又は短い方も相当数いるため、離婚時年金分割制度を利用しなければ、高齢期に十分な年金を受給できないという事態も予想されます。
 そこで、このような制度が創設されました。平成19年4月以後の離婚より、適用可能となります。

5.離婚後の名字、戸籍の扱い・各種保険、各種手当の切替手続

 離婚による効果の一つとして、当然復氏が挙げられます。当然復氏とは、婚姻によって氏を改めた夫又は妻が、離婚によって当然に婚姻前の名字(旧姓)に戻ることです(民法767条1項)。
 もし、婚姻時に使用していた名字をそのまま継続して使用したい場合には、離婚から3か月以内にその旨の届けを区役所等にしなければなりません(民法767条2項)。
 他方、子どもの名字を変更したい場合には、家庭裁判所に子の氏の変更許可申立てを行う必要があります。
 親子が同居しているにもかかわらず、名字が異なることは社会生活上、様々な支障が予想されるため、簡易な手続として、子どものために婚姻時の名字の継続手続を選択する方もいます。
 また、離婚後も子どもは離婚前の戸籍に止まるため、親権者となった者は新たに戸籍をつくり、そこへ子どもを入籍させることが必要となる場合があります。
 さらに、各種保険や各種手当の名義変更なども忘れずに行っておくべきです。

まとめ

 以上、離婚の手続き及び離婚に伴って解決しなければならない問題の概略をご説明しました。
 ここでご説明したことはあくまで概略や一般論であり、実際のケースによっては、そのまま当てはまらないことも多々出てきます。
 結局はケースバイケースといわざるを得ませんが、ご自分にとってベストな解決方法は何なのか、ご自分の要求は通るものなのか等、より具体的なご相談は直接お問い合わせくださいますよう、お願いいたします。

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